HorseBook掲載のセレクトセール上場馬⑤
7月12日・13日に、苫小牧・ノーザンホースパークにて、日本最大級の競走馬セリ「セレクトセール」が開催されます。HorseBookに掲載されているセレクトセール上場馬をご紹介します。
208. タニノハイクレアの2020(父ゴールドシップ)
父ゴールドシップは今浪隆利厩務員の相棒にしてGⅠ6勝馬、そして日本競馬史上でも一、二を争うであろう個性派ホースでした。
2歳時から札幌2歳S・ラジオNIKKEI杯2歳ステークスで2着に入るなど潜在能力の片鱗を見せ、出世レースである共同通信杯では4番手から上がり33.3秒という、のちのレース運びからは信じがたいようなスタイルで重賞初制覇を飾っています。
皐月賞はグランデッツァ、ワールドエース、ディープブリランテに続く4番人気での出走。出遅れて最後方からの競馬を余儀なくされながら道中でポジションを上げ、荒れた馬場を嫌って空いた内を果敢に突く内田博幸騎手の好騎乗でいつの間にか好位に取り付き、直線は弾けるだけという圧巻の競馬でクラシック一冠を達成しました。「ゴルシワープ」として今でも語り草になっているレースです。
ダービーは5着に敗れたものの、神戸新聞杯1着から菊花賞を楽勝して二冠を達成し、続く年末の大一番・有馬記念でも3歳馬ながら1番人気に支持され、その期待に応えるように大外をぶん回して優勝。グランプリホースとしての称号を得、名実ともに文句なしのJRA賞最優秀3歳牡馬を受賞しています。
古馬になってからはここまで見せてきた安定感とは打って変わり、気性や適性の問題での大敗も目立つようになりましたが、宝塚記念連覇(と、3連覇を目指した2015年の大出遅れ)、凱旋門賞への挑戦、横山典弘騎手が道中から常識外れのロングスパートを敢行してつかんだ天皇賞(春)のレースぶりは、見る者すべてを夢中にさせるような特別な魅力を備えていました。
ファンの心をつかんだ様は、前走ジャパンC10着ながら、引退レースの有馬記念で1番人気の支持を受けたことが何よりの証左となるでしょう。ケガなく28戦をタフに走り抜いた4年半の航路は未だ色あせることがありません。
種牡馬としては2019年に産駒がデビューし、父がグランデッツァに敗れて2着だった札幌2歳Sでブラックホール・サトノゴールドが産駒ワンツーを決め、早くも重賞初制覇を達成。今年のオークスでは「生き残る」という名前を授けられたユーバーレーベンがGⅠ初制覇を飾ったばかりです。
母タニノハイクレアは4代母にあのHighclereがいる名門出身。産駒のBurghclereはウインドインハーヘアを生み、日本近代競馬の結晶・ディープインパクトや、キタサンブラックの父として名を上げたブラックタイド、未完の大器レディブロンド、レイデオロの母であるラドラーダ、帝王賞を勝ったゴルトブリッツなど、活躍馬は枚挙にいとまがないクラスの活力ある牝系を形成しました。タニノハイクレア自身も中央4勝の実績を残して繁殖入りすると、ウインシャトレーヌ(JRA5勝、TVh杯制覇)やエーデルメイシュ(JRA3勝)など上級クラスで結果を残す子供たちを輩出しています。